R25とInternet2と最高速と -その2 インターネット最高速-

前のエントリでインターネットより速い!? 「インターネット2」って何だ?について触れました。今回はインターネットの最高速度について少々触れておきたいと思います。

今度は記事の後半より引用。


「その100Gbpsという数字は、あくまでもネットワークの基幹回線である“バックボーン”に直接つないだときの速度ですね。通常、家庭などのPCにつながっている回線は、施設の外で複数束ねられてひとつの大きな回線(=バックボーン)を共有する形になるため、1 人当たりに割り振られる速度はそれより遅くなります。実はバックボーン部分では、一般のインターネットでも100Gbpsを超える超高速回線がすでに実用化されているんですよ」

大手通信事業者が設置しているバックボーンのなかには、なんと1.6Tbps(!!)という超々高速回線も存在するとか。じゃ、インターネット2は…特別速くないってこと?

「ただ、多くの人々に開放されているインターネットに比べて、関係者だけが使えるインターネット2は“閉じたネット”ですから、そもそも利用するユーザー数が断然少ないんです。バックボーンを共有するユーザーが少ないわけですから、当然一人ひとりのスピードは高まります。空いてる高速道路を走るようなものですね」

インターネット2が公式に認定している最高速度は、東京大学を中心とした研究チームが達成した「9.08Gbps(1.135ギガバイト/秒)」の記録がある。が、これはインターネット2のバックボーン速度が10Gbpsだった当時のデータであり、現在はさらに速くなっているはず…。うーん、できれば一度体感してみたいものです。

私も何度かこの最高速系の実験をしたことがあります。専門がストリーミングなので、最高速に到らないまでも、高帯域を消費するストリーミング実験やイベントにはやたらと参加してきましたので、そのことを交えながら記しておきます。

1GbEが浸透し、その辺のラップトップにも採用されていることから、数年前よりも認識が広まっていると思っていたのですが違うのかも。
まず1GbEだからといって1Gbpsきっちり出る、というものではない、ということを知っておくべきです。1GbEだとモノに寄っては単一のストリームで200Mbps出れば御の字です。10GbEでも条件が揃わなければ2Gbpsすら厳しいケースもままあります。
100Mbpsを超える出力を出すための規格が1GbEであり、1Gbpsを超えるための規格が10GbEである、ということをしっかり認識しておかないと過度な期待を抱いて仕舞いかねないと思います。10GbEを導入したけど10Gbpsなんて出ないじゃないか、と怒るのは無理な話です。

そもそも東京大学の例に出ているような最高速度を達成することだって、とんでもなく難しいことです。パケットを送出するためのアプリ、OS、ドライバ、NIC、実験環境に寄りますが途中経路のルータ、スイッチの全てのパフォーマンスチューニングが必要になります。
加えて通常のインターネットでは単一のストリームだけが流れる、という環境はまず存在しません。複数の通信が混在するため、パフォーマンスは劇的に下がるものです。実際問題、途中経路にオフィス街が集中するような場所があると、お昼時間になった瞬間に「暇潰しクリック」が大量発生し、恐ろしくパフォーマンスが低下するものなんです。30Mbpsだって厳しいケースも多いものです。特に記事にあるような最高速テストの際は最低限の通信しか存在しないオペレーションをするか、専有するかしかありません。

インターネットの最高速度実験は、車好きの方なら分かるかも知れませんが、かつての谷田部の最高速テストボンネビルと同じなんですよ。あらゆるものについてカリカリに調整した車を持ち込んで何km/hだったの、勝ったの、負けたの、という世界に非常に似ています。
じゃぁ、その車を公道に持ち込んだから同じスピードが出るか?と言われるとそうじゃない。道も違えば、その道に特化したブツは同じ状態では走ることもできません。ただそこで培われたエッセンスが、将来のハイスピード時代へと反映されていく、そんな世界なのです。