Jail Break是非論争とセキュリティ意識

ここのところ巡回しているiPhone関係のブログのいくつかではJail Breakの問題点が話題になっています。(1ヶ月ほど前当時)
後発の当サイトではありますが、Jail Break論争から抱いた感想などを綴りたいと思います。


恐らくこの論争が起きたのは中島氏のエントリ当たりでしょうか。


私自身はJail BreakしたiPhoneを握っていますし技術的にも面白いと思っています。また、あちこちのアプリを紹介したサイトを楽しみに拝見していますが、ごく一般的なPCアプリの紹介が行われるサイトと異なり、「自己責任でお願いします」という文句が存在することが少なく、楽しげな言葉だけが踊っているケースが多いことが気になります。
私の周りにもiPhoneユーザーは二桁居ますが、Jail Breakのリスクを意識し、いざというときも何とかできる、というユーザーの割合は低いように思えます。危ない話が目の前に振ってこない限り、人間は目の前の楽しい話にコロッと行ってしまうので当然の事象でしょうね。
この辺りの流れに関しては もとまか氏がズバッと書かれているのでご覧下さい。この記事にも書かれていますが、こう書くと語弊があるかも知れませんが、Jail Breakアプリを紹介するサイトはもっと責任逃れをするべきでしょうね。責任逃れをするからには、発生する責任を意識しなければならないわけです。ただ今回の騒動が切っ掛けでアプリ紹介サイトの動きが鈍ると寂しいのでこんなエントリを書いた次第です。
尤も、当サイトもGRiSをやたらとクローズアップしたこともある手前、注意していかないと。


こうして考えるとセキュリティ意識もここ数年で大きく様変わりしましたね。
90年後半にはまだウィルス対策ソフトなんて一般的ではありませんでした。それがHappy 99当たりからド派手な活動をするウィルスが世間を賑わせ始めます。そして一般紙やTV、ラジオでも脅威が伝えられました。
やがてウィルス対策ソフトを入れないとどうやら危ないらしい、という風潮が出てき始めた時にNimdaやCode Redが登場。一般紙の一面にセキュリティ話が出てくるようになるとどうやらファイヤーウォールも同時に入れないと危ないようだ、という風潮が出たように思います。私の周りでも「一般紙の一面にインターネットセキュリティの話題が出た」とセキュリティ話の一般化と、インターネットが生活に大きく関わってきたことについて話題になったのを思い出します。
そして今ではウィルス対策ソフト、ファイヤウォール共に標準搭載が一般的になりました。その結果、今でも新種が登場するとはいえ、ウィルス、ワームの被害などは昔話となったように感じます。ウィルスが添付されたメールもメールサーバで駆除されるのが一般的になり、SPAMメールの類すらも届くのは当たり前、フィルタするのも当然になってきました。


その結果何が起きたか。それは普通の人々が生活する上でインターネットセキュリティを意識することが少なくなったことであるように思います。
スパイウェアやトロイのようなコソっと個人情報を抜き出す被害はあれども、かつてのウィルスやワームのように派手な事件になっていない。某社の海外製スパイウェア駆除ソフトの代理店に関わっている友人が、どうも日本だけ売り上げが芳しくない、と嘆いていましたが一般ユーザーのセキュリティへの注目度が低くなってきたことも挙げられるのではないでしょうか。


加えて情報家電が普及し、何でもなかった家電に組み込みOSが動いています。しかしそのことを意識しているユーザーは少ないもので、iPhoneにしてもHDDレコーダーにしても、中でaptが動いたりしてハッとそう言えばPCだったと気付かされるほどうまく化けられています。


5年ほど前、当時管理していたネットワーク内でHDDレコーダーがクラックされ、踏み台となり、DoS攻撃をしかけていたことがありました。その時の意外性はもの凄いものでした。そう言えばPCだ、そうなるとセキュリティにも影響があるな、と認識したものです。今回のJail Break騒動にしてみても同じで、実はiPhoneiPod touchもファンシーな格好をしているけれどもPCであり、セキュリティの問題があるんだよ、ということを意識することがまずは大切だ、ということなんですよね。


私がインターネットのセキュリティについて講義を行う際、少々臭いのですがこういう例え話をしてきました。



インターネットは大海原に航海に出るようなものだ、その先はとても希望に溢れていて面白いことが沢山ある。その一方で嵐に遭遇するかも知れない。危険な場所に行けば海賊も居るし、そもそも自分が居る地点も海に落ちれば助からない場所かも知れない。インターネットセキュリティを知ることはより楽しく航海をすることです、と。



セキュリティソフトが最初からバンドルされているような現在、良くも悪くも航海に出るための船はユーザーの意識しないところで頑丈になってきたのでしょう。先の中島氏のエントリのコメント欄を見るにつけ、一般紙にセキュリティの話題が踊っていた往時を思い出していたのでした。

(旧サイトより)